[アナキズム運動史]1924年12月22日 中濱哲 獄中にて詩作

髑房小景 http://www.ocv.ne.jp/~kameda/nakahama-poem-dokubou.html

艶消し戀我のビイルデイング

 社會傳染病院の隔離室──冷蔵庫

  三疊の板敷き床とん

 便箱龜 福壽草

   味噌摺鉢にて面洗へ!

ゴザ一枚御座る

 處方箋決定

ナイヒリスチツク

 アナクロ、コンミニユズム

  思想菌保有者にして

下痢 下痢 下痢──

便紙入用者は報知機を下ろせ!

此の壁一重が──

 東隣は放火症

   局部の腐爛 唐辛色の緋膨れ

附添の看護婦が菜蕃所の臺所に

百度踏んで

豫診博士にゴマ摺り通した

お蔭が適面

頑固な瘡葢も剥げ落ちたらしい

 エンヤラヤツト 明日退院

  蒲團と淺裏と引き摺つて

 ホーシヤクゝゝ

灰色の娑婆へ

  有劑

 〇、四六四九

八卦見立也

  痴呆菜蕃所

   豫審博士

 泥吐かせ泥鰻まむし

  同食器

禿琺瑯めんこ

地獄の里芋に

黄金蟲が泊る

  自辧中毒

糞詰り、胃擴腸

 官調

   四分六ノ一二 食鹽水

   グリセリン胡麻味噌、山椒の實

 西隣六六〇號

死刑症危篤

  胃の腑へ噛ム抛ル注射も長くはあるまい

   然り而して

   な往きそね疾く

  冥の府へ『音無しの構へ』──

洋服坊主の余録

賽の河原に橋架けて

 他力を杖に珠數繋ぎ

  淫道渡す

フレエーゝゝ經怪師

  アバヨ、アーメン、なあまいだ

掘る穴二ッ

窓 窓窓 鐵格子

  接見禁止でジヤボン玉がシヤツポ

   閻魔帳 黄帳面 黄表紙

赤紙 黒表等等不許可

一切合切嚢の底をはたいて山は見えた

堂ビルの煙突に飛び込んだ烏賊の群

石炭に醉つ拂つてフラゝゝ

   フライ ライスカレー 豚カツ

地下室食堂 圓テエブルの上の

皿の中に躍るコロツケ ビフテキ

ブランウイスキー ペパアミン

 ABCベタアミン コンデンスミルク

ホツト、カクテル

 ストーブ、ステイム 赫々

──寒かあないと思はんこともあると──

 天井にノツクしてウナ電を打つたら

 撚れゝゝの紐に感電して電球が朶んだ

彼女の月経は

  酸性反應を停滞する

   据膳の吸物

 痩た達磨がガツゝゝに噛ぢつてる夢の骨

その片側に

 蒼褪め凍えた獄衣にひつくるまつて

 縮こまつて轉寝してる起上小法師

  微に顫えへてる薄墨色の『時の影』

   ── 一九二四、一二、二二 ──

[アナキズム運動史]1910年12月19日。大逆事件、幸徳秋水らの意見陳述

20日、幸徳らの意見陳述、22日、幸徳らの意見陳述、補充審問を終え、23日、弁護人の証拠調べ、24日、弁護人の証拠書類閲覧、鶴裁判長は弁護側の証人申請を却下した。25日、検事論告、大逆罪として全員死刑求刑。27、28、29日、弁論。28日に幸徳の母は中村にて死去する。

[アナキズム運動史]1920年12月10日 日本社会主義同盟結成 

 午後6時26分 大杉栄、入京神田青年会館に開催せる自称社会主義同盟講演会に臨みたるが直ちに公安を害するものと認め錦町警察署に検束せられたるも即時釈放

[アナキズム運動史]1910年12月10日 大逆事件開廷

 幸徳秋水らの大逆事件、特別裁判開廷、検事総長冒頭陳述、それに基づく被告訊問と陳述が続く。宮下、新村忠雄の意見陳述、12日、管野、古河、新村善兵衛、幸徳の意見陳述、13日幸徳、森近、奥宮、大石、高木、峯尾、崎久保、成石兄弟の意見陳述、14日、松尾、新見、飛松、佐々木、坂本の意見陳述