『諧調は偽りなり』其の弐

内容、要旨(章ごとに)
1 瀬戸内晴美に甘粕評価の揺らぎが内在化され当初は虐殺まで描くつもりの『美は乱調にあり』を日陰茶屋事件で中断させた。京都の料亭の女将が所持していた甘粕の手紙との出会いがあり『美は乱調にあり』の後編を書く時が熟した
2 大逆事件の年の春四月、伊藤野枝辻潤
3 瀬戸内の日陰茶屋訪問、81年か、関係者からの聴き取り。菊富士ホテルでの大杉栄の生活、関係者からの聴き取り。
4 神近市子による野枝の印象、日陰茶屋事件、
5 神近自身による事件の記述、自伝への感想を瀬戸内は述べる『改造』発表の「豚に投げた真珠」が面白い
6 堀保子と大杉との関係
7 事件の後、菊富士ホテルに大杉が戻る
8 市子と保子、秋田雨雀が根岸監獄の市子に面会『雨雀日記』に記されている、夏目漱石がこの年十二月九日に死すと章の最後を結ぶ
9 八一年二月二十六日、瀬戸内は市川房江の葬儀の後、入院中の荒畑寒村を見舞いに行く、二時間近く話す、日劇の裏、読売新聞の向かい山勘横町に大杉栄の仲間の服部浜次が洋服店を営む、労働運動社の看板も掲げていたという、当時大杉の住まいは鎌倉
10 日陰茶屋事件の反響
ここまで文庫頁は96頁。
瀬戸内の評伝小説は他に『余白の春』(金子文子の評伝)を読んだのみだが小説の構成はいずれも瀬戸内自身の文献調査、当事者の係累、関係者への聞書きの経緯をドキュメントとして組み込んで執筆している。