『諧調は偽りなり』瀬戸内晴美著 其の弐

11 一七年二月十九日、市子第一回公判、秋田雨雀「自伝」がこの日の模様を伝えている。三月二日検事論告、三日後に四年の懲役刑、控訴、三月七日市子は保釈、宮嶋資夫の家に引き取られる
12 大杉栄伊藤野枝には、村木源次郎が側にいる、巣鴨仲町に借家を見つける、魔子が一七年九月二十八日に生まれる
13 一七年、神近市子は原稿書き、判決の夢を見る、控訴を取り下げ服役をする、『引かれものの唄』を一気に書きあげる、『秋田雨雀日記』には市子との交渉が三日にあげず書き込まれる、十月三日に下獄、八王子女監
14 大杉栄の生活は窮乏していた、『文明批評』刊行、野沢重吉のエピソード、遺族が訪ねてくる
15 監獄での神近市子の生活、「牢獄通信」に言及、懺悔や回心が記されている、その後獄外で書かれる文では一切そういう心情は書かれない
16 一九年十月二日、神近市子の刑期が終わる、秋田雨雀エロシェンコらの出迎え
17 瀬戸内晴美、連載中に堀保子関係者から資料が届く、荒川義英のこと、佐藤春夫
18 佐藤春夫が最後に大杉栄に逢った話、堺利彦関連者からの手紙
19 大杉栄伊藤野枝の上にも生活の変動があった、一七年末巣鴨から亀戸へ移る、『文明批評』の創刊
20 和田久太郎と久板卯之助が大杉栄の同志となる、渡辺政太郎、和田、久板の活動に言及
文庫167頁
21 村木源次郎の生い立ちと活動、赤旗事件、大逆事件の頃
22 荒畑寒村、山川均の「青服」筆禍事件、米騒動、一九年一月大杉栄伊藤野枝は田端から西ヶ原に移る、演説もらい、北風会、警視庁刑事課長正力松太郎、「大杉一派」
23 一九年七月一五日、日本労働連合会の演説会、一七日「労働問題演説会」築地川崎屋、検束から十数人が築地署に留められる、伊藤野枝の差し入れ、「尾行巡査殴打事件」
24 大杉栄は豊多摩監獄へ、伊藤野枝はエマを出産、野枝の栄宛手紙、四月に鎌倉に移る
25 神近市子と鈴木厚、渋谷で同居
26 神近と鈴木に関する記述『秋田雨雀日記』、吉田一が頻繁に訪れる、二間を占拠し『労働者』の発行、宮嶋資夫が神近市子を大杉に紹介した、大杉は『労働運動』を六号で廃刊、鎌倉に住む、近藤憲二の回想、第二回メーデー、「労働社」の同人の検束、市子の出産