1923年9月16日。大杉栄、伊藤野枝、橘宗一虐殺さる「戦友の死「大杉栄、伊藤野枝両君が、去る九月十六日、橘宗一君と共に東京憲兵隊本部で虐殺された事は、既に諸君の熟知せるところである。

同志諸君! 我等が常に、友人として、先輩として、且つはまた我等の有力なる同志として、相励まし相親しんでゐた大杉、伊藤の両君は倒れた。我等の運動の尊き犠牲として、遂に我等の戦線に倒れた。我等は両君の死によつて、まことに償ふべからざる大なる寂寥を感ずる。なき友を懐ふとき、我等にはなつかしき思出のみ残る。しかし斯くの如きは、我等の運動の途上にまた止むを得ざるところである。
同志諸君! 我等の戦友は倒れた。されど我等は不断の戦ひに従つてゐる。我等は数段の勇を鼓して進まねばならぬ。倒れたる戦友の屍を踏み越えて突き進まねばならぬ。一層の覚悟と決心とを以つて。
同志諸君! 我等が戦友の屍を焼く煙はあがつてゐる。勇敢不屈なりし同志の屍を焼く煙はあがつてゐる。されど同志よ、この貴き死灰の下より、及び彼が如き多くの人々の死灰の下より、我等の自由の大樹は生ひ出づるであらう。」近藤憲二『労働運動』第一号 1923年12月20日発行。
大杉榮に関してはhttp://members2.jcom.home.ne.jp/anarchism/osugisakae.html