世田谷区教育委員会、校長会、文

科省に「過激」視される横尾忠則作品とタイトルをしたテキスト・コラージュ。

「教科・日本語」を推し進める世田谷区教育委員会、区立小学校校長会は別件でも≪「教育基本法」の精神にかなう企て・By「展 評」ブログのコメント≫を図った。

 それは自ら企画した「冒険王・横尾忠則展鑑賞」を『児童に不向き、過激』 という「理由」で
中止にした件である。顛末、評価はマスコミ記事、美術に関心が深い人たちのブログで少ないながらも取上げられている。記
事とブログを紹介する。『朝日新聞』紙版は6月6日付け朝刊のいわゆる「第二社会面」≪もっと知りたい≫で大きく取上げたが、東京新聞が先行して報道をしていた。他のマスコミは触れていないようである。

 また横尾作品を取上げた高校の
『美術』教科書が「07年度教科
書検定では、日本文教出版
が高校用の「美術3(ローマ数字
の3)」に収録しようとした横尾
忠則さん(71)作製のポスター
が「健全な情操の育成に必要な配
慮を欠いているとして差し替えら
れていた」という報道が3月
にされた。

 冒険王・横尾忠則展を「下見」
した世田谷の教員か校長がこの3
月の記事≪文末に引用≫を参考
に横尾作品に対し「偏見」をもっ
て臨んだか定かではないが、「健
全」なる校長会は横尾作品
を「非健全」と位置づけることで
話題づくりに加担したことは間違
いはない。

 世田谷美術館での横尾展は明日
で終了であるが兵庫県立美術館
は6月27日から8月24日
にかけて開催される。
 横尾展の後、世田谷美術館にて
6月28日から開催される≪建築が
見る夢、石山修武と12の物
語≫は「建築がみる夢はもっと、
実はセクシュアルで、ゾクゾクす
るものになるから」と、本人が誘
いをかけている。関心がある方は
「鑑賞」を。
               
              

東京新聞≫ウェブ版
http://www.tokyo-np.co.jp/arti
cle/national/news/CK2008051602
011818.html
『児童に不向き、過激』 横尾展
の鑑賞教室中止 世田谷区教委 
2008年5月16日 夕刊「東京都世田
谷区の世田谷美術館で開催中の画
横尾忠則さん(71)の企画展
をめぐり、教員から「教育上、子
どもに好ましくない」との声が上
がり、区教育委員会が地元小学生
向けの美術鑑賞教室を急きょ中止
したことが分かった。横尾さん側
には事前に知らされておらず、区
教委へ抗議する事態になってい
る。
 

 鑑賞教室は一九八六年の開館と
同時に区教委が始めた。今回予定
されていた鑑賞教室は、同館が一
月に区内の小学校に対して説明会
を開き、二月に二十二校の小学四
年生の受け入れを決定。今月十四
日からの実施に向けて準備を整え
ていた。
 企画展には血の付いたナイフを
持つ少年や半裸の女性など性を描
いた作品も含まれ、区教委による
と、下見をした教員から「小学生
にふさわしくない」「過激すぎ
る」といった意見が出た。このた
め、校長会の意向を受けて四月
末、鑑賞教室の中止を決めた。だ
が、横尾さんや同館には事前に相
談しなかったという。
 同館の学芸員は「『冒険王』と
いう名の通り少年の心を取り戻そ
うというのが狙い。過激やエロ
チックなものを前面に打ち出して
はいない。ガイドを工夫すれば子
どもにも配慮できる」と困惑す
る。
 
 略

横尾忠則本人のブログ
横尾忠則のひとり言、昨日・今
日・明日>
http://www.tadanoriyokoo.com/v
ision/index.htm
「5月27日、例の世田谷区教育委
員会が「冒険王」展観賞拒否を22
校の小学校に通達したという問題
で新聞各紙が取材を始めているよ
うだけれど、この際美術館側がバ
シッと一言コメントされた方がい
いんじゃないかな。でないといつ
までも尾を引きそうだ。それにし
ても教育委員会がこの展覧会の後
援者なんですよね。この問題が新
聞で報道されてからというもの子
供連れの観客が増えているという
のも皮肉だね。それも子供が大い
に喜んでいるという。教育委員会
の発言は逆効果を上げて動員に協
力した形になっているのがおかし
いというか嬉しいね。」

「今朝(6/6)の朝日新聞に世田
教育委員会が小学四年生の展覧
会見学拒否問題が大きく取り上げ
られていたが、すでに読まれた方
も多いと思う。それにしても教育
委員会側はこちら(美術館と作
家)に対して何の連絡もない。こ
ういう教育にたずさわる人間の無
責任な態度こそ問題じゃないで
しょうかね。彼等は一体何を恐れ
ているんですかね。彼等の恐れが
逆に裏目に出るということが解ら
ないんですかね。」

次回の展覧会の対象となる建築家
石山修武氏は
石山修武研究室>「ブログ世田
谷村」にて
ishiyama.arch.waseda.ac.jp/
「六月六日 ……大人気、大入り
の理由は勿論横尾の絵画の芸術性
にある。時にその本質に在る大衆
性、というよりも今では死語に
なってしまった感のある民衆性に
ある。我々は大量消費社会の消費
者としての市民であるだけではな
い。セクシュアルな野生をまだ内
に持つ、皆、夢みる人間である事
を、横尾絵画はよく表明している
からだ。」
世田谷教育委員会に触れて
「そして、民衆、世田谷区民も大
いに本来のエネルギーを発揮し
て、好奇心ムンムンの民衆振りを
大入り状態、美術館に行列状態で
表現し得たのである。これは芸術
本来の事件性、新奇性、スキャン
ダルの素を提供し得る可能性につ
いても再び眼を開かせてくれる事
となったのである。その意味では
区教委の「美術鑑賞教室」中止は
大いに大事な問題の扉を開く役割
を果す事となり、快挙であっ
た。」
「区の小学校四年生諸君はこぞっ
て仲間をつのり、世田谷美術館
足を運んだら良い。君達にはすで
にほほえましいとしか思えぬよう
セクシュアリティーや、やさし
い暴力としか言い様のないエレガ
ンシーをなつかしく鑑賞できるに
違いないだろう。そして、僕達は
実はもうチョッと過激なんだよね
と、ペロリと舌を出す四年生もい
るだろう。」
「私も及ばずながら、新たにワ
ザワザ、男女の性行為を直写した
如き建築設計でも付け加えるか
と、非力ながら対抗策を考えてい
るのである。
小学生四年諸君!次の「建築が
みる夢」はもっと、実はセクシュ
アルで、ゾクゾクするものになる
から、横尾忠則展に引き続き世田
谷美術館に足を運ぶようにしてく
れたまえ。」
 石山「世田谷村」の引用はここ
まで。

≪展 評≫というアート系批評の
ブログからの部分転載はここか
ら。
http://tenpyo.sblo.jp/article/
15780221.html
2008年06月07日
冒険王・横尾忠則
初公開!60年代未公開作品から最
新絵画まで
 横尾忠則展をめぐる社会的事件
について一言しておく。ソースは
朝日新聞(6月6日朝刊)の記事
と、独自取材である。
「鑑賞教育の対象から外されるこ
とになった。性的な表現や、暴力
にかかわる表現のあることが忌避
されたのだ。忌避の事由の是非は
ともかく、鑑賞の中止を決定した
当の区教委が、この展覧会を後援
しているのだから、おどろかない
わけにいかない。後援するからに
は、充分な吟味が行われたはずで
あり、横尾展が学校教育にかんし
て如何なる意義を有するのか、ま
た、それが学校教育に馴染むのも
のであるかどうかという点につい
て、事がここに至る前に何らかの
判断が下されていて当然だからで
ある。横尾展が学校教育になじま
ないとする判断を、校長会の申し
入れを受け入れるかたちで、そそ
くさと下したとういうのは、どう
しても解せないのだ。」

 「公立美術館と公立小学校で
は、いうまでもなく立場が異な
る。美術館も学校と同じく教育に
かかわる機関ではあるものの、そ
れは社会教育の場であって児童教
育に特化された場ではない。それ
どころか、両者は時に対蹠的でさ
えある。芸術教育の重要な目的の
ひとつは、自分独りで感じ、考え
ることのできる自律的人間の在り
方を追求する共和主義的理想に存
しているからであり、これは、日
本国における学校教育の現実と正
反対といってよい。学校教育は、
その理想はともあれ、日の丸、君
が代の強制や職員会議の空洞化に
みられるように、現実上は、現存
公権力にとって都合のよい人間を
育てあげることを――つまり愚民
の養成を――目的としているとし
かみえないからである。このよう
な学校教育の現状にとって、美術
館が時に“危険”な存在でもある
ことはいうまでもあるまい。この
“危険”が愚劣さへの警告の意味
をもつこともまた、いうまでもな
いところであるだろう。」

 「世田谷区の「美術鑑賞教
室」は、「伝統と文化」を尊重す
る態度の育成を目標にかかげる
教育基本法」の精神にかなう企
てである。また、近年の鑑賞教育
重視の動きとも連動する重要な催
しともいえる。美術館と学校とい
う、それぞれに教育にたずさわる
二つの機関が、はたして、どのよ
うなかたちで互いにかかわりうる
のか、この機会に根本的な反省が
なされて然るべきだろう。むろ
ん、これは世田谷区にのみかかわ
る事柄ではない。」
(北澤憲昭)≪展評≫はここま
で。

アサヒ・コム』2008年03月26日
過激?横尾忠則氏のポスター差し
替え 美術教科書検定
文部科学省が25日に公表した0
7年度教科書検定では、日本文教
出版が高校用の「美術3(ローマ
数字の3)」に収録しようとした
横尾忠則さん(71)作製のポス
ターが「健全な情操の育成に必要
な配慮を欠いている」と意見がつ
き、差し替えられた。文科省
「芸術的価値を否定するのではな
く、高校生の教科書として配慮不
十分との判断だ」と話すが、横尾
さんは「表層的な判断で、芸術が
何たるものか勉強していない」と
憤る。
「健全な情操の育成について必要
な配慮を欠いている」と検定意見
がついた、横尾忠則さん作製のポ
スター
 ポスターは1965年、故・土
方巽氏らが主催した「暗黒舞踏
提携記念公演」用に作製された。
ルーブル美術館所蔵の「ガブリエ
ル・デストレとその姉妹」などを
モチーフとした作品だが、文科省
は左上に「私の娘展示即賣會場」
の文字があることなどを理由に意
見をつけた。
 「横尾さんのその後の作品の流
れを決定づけた」と選んだ日本文
教出版は検定意見に驚きながらも
「ついた以上、やむを得ない」と
判断。横尾さんの了解を得て、横
尾さんの別のポスターに差し替え
た。
 ■想像力の貧困さのあらわれ
横尾さんの話 作品はアーティス
トにとってある種の子ども。「私
の娘」はそういう趣旨で、舞踏を
公演会場で売るという意味。それ
も読み取れないのは想像力の貧困
さのあらわれだ。
 アサヒコム引用はここまで。