1916年7月16日 

大杉栄より伊藤野枝宛書簡 
「……うんと喧嘩でもして早く帰って来るがいい。その御褒美には、どんなにでもして可愛がってあげる。そして二人して、力をあわせて、四方八方にできるだけの悪事を働くのだ。それとも、この悪事をあと廻しにして、叔父さんの言う通りにアメリカへでも行くか。そして二年なり三年なり、語学と音楽とをうんと勉強してくるか。人間の運命はどうなるか分らない。……いずれにしても野枝子の勝利だ。……帰っておいで。早く帰っておいで。一日でも早く帰っておいで。手紙を開封したような形跡があったら、警察へおしりをまくってあばれこんでやるがいい。」