2006-02-24から1日間の記事一覧

『獄窓から』和田久太郎

昭和三年一月九日 地球がガタンといふ響きと共に廻轉して、此間お芽出度い昭和の三年がやって来た。 さてお芽出度う。久さんも御年三十六歳にならせられた。君も、ふく子さんも、桂君も、公っぺいも、明坊も、皆んな間違ひなく一つだけ年をとつた事と考へる…

『獄窓から』和田久太郎

大正十四年十二月十三日 漸くの事で此の手紙を書かせて貰ふことになった。九月以来だから、一寸久し振りだ。皆々無事壮健の事と信ずる。 先達って、近藤君と共に桂(望月)君が面会に来てくれたのは、大いに嬉しかった。厚くお礼を言ふ。近藤君へは残念ながら…