中浜哲、控訴院死刑判決から六日

中浜哲「弥生空 魏櫓枕高く 霞往く 黒蝶ぞ我散る花に舞う」
弁護人の山崎今朝弥宛ハガキに記す。


<獄中影>

差入れの本の間より
黝きクローバの一つ落ちぬ
彼女のこゝろ


轉げ出でぬ
六神丸の原料のごと
紫の膽の色 菫の押し花


壁に活かして
セイリョフの幻影を
追ひ懐かしむ 昂奮れる今は


せめてもに
十三人にて起こせしと聞く
外国の革命を偲び 涙を拂ふ


国禁の書を悉皆読み破りたし
国禁の思想 術なく
籠れる今は