午前の気温の上昇に誘われて、いつも降りる駅の一つ先で下車。駅前に「ブック・オフ」があり客の出入りも頻繁なのでつられて入る。
105円コーナーで瀬戸内晴美『諧調は偽りなり』87年文春文庫を発見。カバーは横尾忠則
瀬戸内が81年1月から83年8月にかけて『月刊 文藝春秋』に連載した大杉栄の評伝。523頁という長編。84年3月の元本刊行時はハードカバーの単行本と推測するが、当時は二次的資料となる読み物には関心がなく購入をしていない。黒色戦線社の大島英三郎さんから、瀬戸内が参考文献にあげているアナキズム文献の復刻版は贈呈されていた。
瀬戸内の全集は新潮社が刊行したばかりである。定価は高い。
http://book.shinchosha.co.jp/zenshu/setouchi/ichiran.html
〔第六巻〕〈長篇4〉
明治の終わりの大逆事件を題材に、革命家・管野須賀子を描く「遠い声」と、同じく大逆予備罪に問われ獄中で自殺した金子文子を描く「余白の春」。愛と革命に激しく生きた女性たちの伝記小説二編。四六判変型/6825円(定価)/646406-3/発行:2001年7月
〔第十二巻〕〈長篇9〉
社会主義者大杉栄と運命的に結ばれ、壮絶な生涯を送った伊藤野枝を描く「美は乱調にあり」。大杉・野枝のその後を中心に大正時代の劇的な空気を描く「諧調は偽りなり」二篇の長篇伝記小説を収録。四六判変型/7665円(定価)/646412-8/発行:2002年1月
ブック・オフを出て公団の団地や畑地を左右に見ながら家への最短の道筋を見当をつけて歩く。しばらく進むと某大学のグラウンドに突き当たる。大学の構内を左手に見て住宅のまばらなブロックを抜ける。その先にはまた団地があり手前の道路は拡幅工事中。1900年代の始めは農家が点在、畑と野原が広がり、その合間を農業用水にもなる川がうねっていた地域である。
早咲の種類の桜が民家の角に見える。『諧調は偽りなり』を「歩き読み」しながら来たので駅からは18分もかかった。自宅に着く。庭では半ノラの猫をめぐって近所の猫たちが入れ替わり立ち代りで追っかけにくる。