1925年6月29日。古田大次郎「獄中手記」より。

空のボンヤリした日だ。しかし、全て夏だ。輝く陽の光。熱い風。焼けた土の臭ひ。
再び僕は夏の太陽を見る。求刑があっても、心は少しも変らない。却つて落付いた位だ。一つは判決にまだ間がある所為なのだ。それにしても、少しは如何がなりさうなものだが。自分も随分偉くなつた。しかし、見る世界が少し違うつて来た。夢を見てゐるやうな気持がする。