社会運動の昭和史−語られざる深層』加藤哲郎・伊藤晃・井上學〔編〕『

         (白順社、2006年7月25日、412p.)
        (ISBN: 4-8344-0091-3 / 本体価格: 4,200円)


 〔目次〕

   はしがき 加藤哲郎・伊藤晃・井上學

    第I部 昭和クライシスの諸相

 第1章 「党創立記念日」という神話 加藤哲郎

 第2章 「革命的批判」の射程−中野重治神山茂夫 栗原幸夫

 第3章 特高と機密費、あるいは革命家とスパイ−特高田部亀一と三田村四郎、三舩留吉 くらせ・みきお

 第4章 尹基協の足跡−1909〜1932 朝倉 授

 第5章 一九三〇年代日朝共産主義者の邂逅−三宅鹿之助と李載裕 井上 學

 第6章 満州における共産党と「満鉄マルクス主義」 松村高夫

    第II部 戦後史の忘れもの

 第7章 戦後共産党再建期の天皇制問題 伊藤 晃

 第8章 奄美民共和国から日本復帰へ −非合法奄美共産党の証言 松田 清

 第9章 闇に消えた党内党−非合法沖縄共産党の証言 大峰林一

 第10章 新左翼の源流・全学連〜ブント−歴史的必然性について 蔵田計成

 第11章 日本共産主義運動史研究・最近の一〇年 田中真人

   本書の成り立ちについて / 執筆者一覧


―「はしがき」より(pp.3-5.)―――――――――――――――↓(以下引用)
 本書は、昭和史における一方の主役でありながら、二一世紀に入って忘れ去られようとしている、社会主義共産主義運動の問題を扱う。なぜ、いま、共産党なのか?

 一九四五年の敗戦を境にしながらも、一九二六〜八九年の昭和史六〇年余を一つの時代として表象可能にするものは、昭和天皇ヒロヒトの存在とともに、天皇を中心とした国家体制・国民統合のあり方を「天皇制」として問題にした社会主義共産主義運動の存在だった。「天皇制」という言葉自体、戦前日本共産党の革命戦略から生まれたもので、戦後の象徴天皇制下で学問的市民権を得て普通名詞になった。
 ただし「天皇制打倒」は、かつて日本共産党が主張したほどには「一貫した」ものではなかった。共和主義の思想的伝統は、日本にはほとんどなかった。「天皇制打倒」は、もともとコミンテルン=世界共産党から与えられ、共産党が他の社会主義・民主主義勢力に対して「唯一前衛党」を語るうえでの差異化の言説の一つであった。本書が全体を通じて明らかにする第一のものは、昭和史の深層を貫く、天皇制とその廃絶をめざした社会運動の関係性、そこに孕まれた矛盾と相剋である。
 本書の執筆者全員が、天皇の代替わりによる時代区分や元号を好まない。本書での記述も史資料自体での語りを除けば、元号を使用していない。にもかかわらず本書を敢えて『社会運動の昭和史――語られざる深層』と題したのは、昭和天皇の死が二〇世紀共産主義運動の世界史的終焉に重なり、「昭和」とともに「反昭和」も歴史となって、いまや日本共産党さえ「天皇制打倒」「君主制廃止」の旗を下ろした、その歴史的・運動論的根拠を探ろうと試みたからである。

 本書を貫く第二の特徴は、運動史における周縁・辺境、被差別民衆からの視点である。日本の社旗主義・共産主義運動には、片山潜幸徳秋水大杉栄の時代から、アメリカ、ロシア、ヨーロッパからの影響と、中国・朝鮮の運動との関係性が、刻印されていた。しかし、これまでの研究から抽出される「国際主義」「連帯」は、そのソ連邦コミンテルンへの権威主義的従属を除けば、おおむね指導者レベルの公式的言説にとどまりがちだった。
 本書は、日本本土の在日朝鮮人、沖縄・奄美の人々、朝鮮半島や「満州国」の内部で日本とアジアの民衆的連帯を実際に試みた人々に光をあて、中央指導部レベルでの公式教義とは異なる「連帯」の矛盾に満ちた実相を明らかにしようとした。無論それは、部落解放運動、女性解放運動、海外移民・出稼ぎ労働者の社会運動、日本共産党に直接関わらない独立社会主義者無政府主義者やいわゆる「新左翼」運動まで視野を広げる必要があるが、本書では、それらのごく一部を扱いえたにすぎない。
 にもかかわらず、周辺におかれた社会運動の実相に内在することによって、戦略・戦術や中央指導部レベルで語られてきた運動の深層での「昭和期日本」の一断面を示すことができたであろう。それら個々の運動の評価は、本書の中でも必ずしも一致しない。しかしそれは「不協和音」ではなく、モノトーンな主旋律に抑え込まれていた肉声や怨嗟の表出であり、むしろ運動のダイナミクスを再現するものである。
 「昭和期日本」で一度は共産党をくぐった人々は、おそらく百万人を越える。労働組合運動や平和運動、中央・地方選挙での支持活動など周辺で「党」を支えた人々を加えれば、数千万人になるであろう。そうした人々が実際に体感した社会主義共産主義を、それらの体験と記憶の差異を、沈黙と告白・告発の意味を、本書では大切にし、復元しようと努めた。

 第三に、日本における「昭和」の終焉、社会主義共産主義運動の衰退は、皮肉なことに、そうした運動の深層や裏面を照らす史資料の大量公開、史実と証言の発掘と軌を一にした。典型的には旧ソ連崩壊によるコミンテルン秘密文書の公開であるが、それに留まらない。アメリカやアジアからも「昭和期日本」を照射するさまざまな史資料が現れてきた。
 国内でも、昭和期の運動を担った人々の手元に埋もれていた文書や手記・証言類が、それらの人々の死亡や高齢化によって、時に公然と、時にひそやかに扉を開かれ、利用可能になった。本書のもとになった研究会の呼びかけ人増山太助氏の証言がそうであり、本書にも何人かは、そうした体験を直接記した記録を寄せている。本書の執筆者のなかには、日本における運動の組織者・体験者と、運動の記録と記憶を長年にわたり収集してきた研究者・歴史家の双方が含まれている。こうした意味では、本書は、ソ連崩壊後の新たな史資料的条件のもとで、かつて隆盛だった「運動史研究」を再審し、書き換える試みである。
―「はしがき」より(pp.3-5.)―――――――――――――――↑(以上引用)


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http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/10/12/20041012000074.html★詳細記事のURL★布施弁護士は1919年、在日本留学生が宣布した「2・8独立宣言」のリーダー、・崔八龍(チェ・パルヨン)先生、宋継白(ソン・ゲベク)先生など「朝鮮青年独立団」の弁護を担当した。

 外国人であるために、遺族年金は支給されない。 これまで建国勲章が授与された外国人は合わせて45人で、国別では、中国31人、英国6人、米国3人、アイルランド3人、カナダ1人だった。