後藤謙太郎
<病める労働者の歌> 『労働者』2-7 1923.8.10掲載
二年前
巡査に蹴られた靴跡が
今も眞黒に残つてゐるぞ
背中には坑夫時代の
傷のあと
足に眞黒き巡査の靴あと
奴隷から
ぬけ出ることを考へろ
必然などゝ済まして居れるか
友や師と
親兄弟とも戦へり
こんな悲劇が何処にあるのか
口には下駄の歯入れを
尊びし智識階級に
踏まれし労働者
ヨツフエは
帝国ホテルに陣取れり
喰ふに喰はれぬ日本の労働者
暗黒の石炭礦から
来た俺だ
★一行活字潰し
ナツパ着て獄舎に歌へ
戦闘労働者
何処へでも
行ける処につれて行け
裸になつたぞ、度胸は据わつた